福岡県宗像市の歯科・小児歯科・口腔外科・マイクロスコープ・セカンドオピニオン・訪問歯科
くりえいと歯科おおかわちクリニック 福岡県宗像市くりえいと三丁目3番1号 月~土9:00~17:30まで診療 最終受付17:00 ご予約はお電話番号0940-39-8020まで

実際の治療内容

歯を抜かない、歯を残す根管治療 概要

歯を抜きたくない!抜歯せずになんとか残したい!

痛みも大したことなく揺れもない歯の場合で、ただ膿んでいるから、病巣が大きいから抜歯が必要ですとだけ言われた歯の場合、抜歯せずに残せる可能性は十分にあります。
まず、「神経を取ってしまった歯が、また虫歯になってしまい、根が膿んでいる」というのはどういう状態なのでしょうか。
もともと神経が入っていた歯の中のことを"根管"と言いますが、そこに細菌による感染を起こしている場合、これを"感染根管"といいます。
下の絵にある右側の歯の状態です。
左の図:感染していない神経のない歯 右の図:虫歯に感染して病巣ができた歯

携帯やスマホ画面では小さくてわかりづらいと思うので説明すると、歯の形をした灰色の部分は銀歯です。この下に自分の歯があるわけですが、真ん中はもともと神経が入っていた空洞である根管があり、根管は根充材(オレンジ色の部分)で満たされ、根充材の上に歯の強度を増すための補強材であるコア(黄色の部分)が充填されています。
右の図では、銀歯の縁が歯の縁にあっておらず、段差があり汚れがたまりやすい形になっています。そこから虫歯になり、虫歯の菌がコアや根充材の隙間を通って、根の尖端("根尖"といいます)にまで及んでしまい、病巣を作っています。これを"根尖病巣"といいます。根尖病巣はもともとそこにあった顎の骨を溶かしながら発生するので、X線上では根の尖端に黒く抜けた像として写ります。
すでに神経がない根管内には、血液の循環もありません。つまり、細菌が侵入してきても、自分の免疫で駆除できないということです。根管内が感染した場合、改めて人為的に綺麗にしてあげない限り、そこには細菌が居座り続け、常に根尖側に細菌や毒素を出し続ける状態になります。その結果、根尖病巣ができてしまうのです。神経がないのに何で歯が痛く感じるの?と不思議に思われている方もいらっしゃると思いますが、この痛みは根尖病巣により顎の骨の中の神経が痛みを感じているのです(もしくは歯根膜)この根尖病巣を治療するには、その原因である、感染根管を綺麗にし、細菌を限りなく0に近づけることが何より重要になります。そのために、一度銀歯を外し、コアを外し、感染した根充材を除去し、根管内にしみ込んだの細菌や汚れを徹底的に除去していくのですが、すでに一度削られている歯をさらにまた削ることになるため、歯が菲薄化し、そのまま穴が空いたり、割れてしまったりするリスクが何も触っていない歯に比べると高くなり、治療の負担に耐えられずそのまま抜歯になってしまうことがあるのです。歯医者によって、どの程度の状態の歯なら自分なら治療し歯を保存できるかが大体わかっているため、治療前に痛みがそうなかったとしても、「(治療には耐えられる歯ではないだろうから)抜歯になります」と言われるわけです。また実は根管の形はとても複雑で、植物の根のようになっています。今現在治療されている根管以外にも通常だと器具が届かないような根管が残っているかもしれず、そういう場合は再治療をしても結局器具が届かない場所は綺麗にしようがないので、治療が無駄になってしまい、結局抜歯になるわけです。
そこで、なんとか薄く残った健全な歯質のみを残し、感染物だけを根管から取り除く道具として、ラバーダムやマイクロスコープ、マイクロスコープ下で使う細かい器具があるのです。これらを駆使することで、従来の方法では治療困難だった感染根管でも、救える歯がかなり増えました。

どうやって治療するの?根管治療で気を付けることは何?

歯の頭側程細菌がたくさんいる
細菌のほとんどは歯の頭側にいて、根の先に行く程にどんどん細菌の数は少なくなっていきます。これにより何を気を付けるべきかというと、歯の頭側にいる大量の細菌が残ったまま、根の尖端をいきなり触ろうと器具をつっこむと、逆に大量の細菌を根尖に押し込んでしまうことになりかねないのです。これは歯周病の歯石取りでもそうですが、汚れや細菌の多くは浅いところに沢山いるものなので、おもてから徹底的に綺麗にしていき、慎重に深いところを順次触っていかなければなりません。また、唾液の中にも細菌がいるので、唾液が入らない環境で治療する必要があります。そのために隔壁処置、ラバーダム処置というものが必要になります。
よく日本の根管治療で使用されているFC(ホルムクレゾール)というホルマリンの薬は細菌を殺しはしますが、自分の細胞にも害が多いです。また、細菌の死骸は残ります。生きている菌がいなくなるだけで、死骸や汚れは残ったままということです。死骸や汚れが炎症の元にもなります。そして自分の細胞にも大きなダメージを与えるせいで、細菌由来ではなく薬由来の症状が出ることもあります。こういったことにならないように、根っこの治療の専門科達は、使う薬は次亜塩素酸ナトリウムの水溶液と水酸化カルシウムを主に使います。殺菌力だけでなく、有機物を溶かす力があるため、細菌の死骸も残りません。汚れも綺麗に溶けてなくなります。また、ホルマリンよりも細胞に対する毒性が少なくより安全に使えます。では、それならそれが絶対良いのになぜ使わないのかと思われるでしょう。もちろんちゃんと理由があって、次亜塩素酸ナトリウムはしっかり長時間作用させるのが重要なのですが、その時口の中に漏れると粘膜がやけどしたような状態になってしまうため、ラバーダムをしないと適切な量を適切な時間作用させることができないのです。そして、ラバーダムをするには多くの場合で隔壁処置が必要になり、隔壁処置は日本の保険は効かないため、結局保険内治療ではある程度以上虫歯が大きくなってしまうと、ラバーなしの適当治療にならざるを得なくなってしまうのです。保険制度は貧富を問わず統一された治療が誰でも受けられ、とても良い制度だと思いますが、歯科治療に関してはそれが足かせになってしまっていることが多々あります。すべてを自費でできれば、かなり理想的な治療ができますが、それを受けられる方はごく少数になってしまうでしょう。当院では保険治療でもラバーダムがかけられる歯は必ずかけて治療を行います。ラバーダムは0円です。ラバーダムをしてもしなくても保険治療の費用は変わらないため、ラバーダムを使えば使う程赤字です。患者さんもラバーダムをするとずっと口を開けっ放しになるので、それがきつくて嫌だという人もいらっしゃいます。ですが、しなければいけないのです。治療を行うときには、これらのことを患者さん自身にもしっかり知っていただき、術者と二人三脚で頑張っていく必要があります。

説明資料②
根管治療で治らない歯の治療法 ~外科的歯内療法~


外科的歯内療法の説明
神経が入っている空間が細菌で汚染されてしまうと歯の根の先に病変ができてしまいます。通常は歯の中(根管)を綺麗にすることで治癒していくのですが、根管の形が複雑だったり、根の先が割れていたり壊れていたりすると細菌を十分取り除くことができず病変も治りきらないことがあります。そういったときに行うのが、外科的に歯の根っこの先端だけを切除し、切除した面からお薬を改めて詰めてしまう方法です。ここの説明はまたいずれ追記します。

→次は【case3-2 無菌的根管治療を行うための隔壁処置2】へ

症例一覧

注※ここから先は虫歯の写真や歯茎からの出血を伴う写真がアップで表示されます。