福岡県宗像市の歯科・小児歯科・口腔外科・マイクロスコープ・セカンドオピニオン・訪問歯科
くりえいと歯科おおかわちクリニック 福岡県宗像市くりえいと三丁目3番1号 月~土9:00~17:30まで診療 最終受付17:00 ご予約はお電話番号0940-39-8020まで

実際の治療内容

紹介をご検討の先生向け・症例閲覧ページ

※ こちらは歯科医師向けのコンテンツです。一般の患者様向けの内容ではございません。

当院でお受けしている症例・行っている治療

エンド関連に問題をかかえるすべての患者様をお受けしております。難症例は当然として、簡易症例、Initial treatmentも受け付けております。根尖病変がない状態の未治療の根管が最も成功率が高くMI治療の恩恵をフルで得られるという点で、最初からご紹介いただけるとより理想的な治療が可能になります。
  • 抜髄・Initial treatment
  • 感染根管処置・Retreatment
  • 歯根破折診断・保存治療
  • 根未完成歯の再生療法・Regeneration・アペキシフィケーション・アペキソゲネシス・リバスクラリゼーション
  • 歯髄温存療法・Indirect pulp capping・Fullpulpotomy
  • 外科的歯内療法・Apicoectomy・Intentional replantation
  • パーフォレーションリペア
  • 歯性上顎洞炎の治療
  • 破折ファイル対応

こちらはYOUTUBEにアップしている破折ファイル除去動画です。破折ファイルは必ず除去しなければいけいないものではありませんが、簡単に取れるものも多いです。
特に最初の動画は大分前の動画です。今はより鮮やかにできます。


2024年からfacebookにて毎週エンド症例報告を行っております。こちらは過去のfacebook記事のアーカイブです。最新情報はfacebookもご参考にされてください。


2024.1.9 facebook投稿分:ロングスパンブリッジ支台歯のApicoectomy

ロングスパンブリッジ支台歯右上2のapicoectomy症例CBCT像、歯槽骨の回復が見て取れる
ロングスパンブリッジ支台歯右上2のapicoectomy症例PA像、これだけ大きいと治癒には時間がかかる

※ 歯科医師向けの記事です

症例紹介
「根尖病変があるがブリッジを外したくない」

同じ歯科医師会の先生からご紹介いただいた患者様
男性 来院当時71歳

依頼内容
上顎犬歯にかなり大きな根尖病変があり治療が必要であるが、こちら(紹介元医院)では保存は難しいと判断した。
当該歯は9本分のロングスパンブリッジの支台歯であり、ブリッジを除去するとそのまま義歯になるリスクが高い。
患者本人は義歯を望んでいない。ブリッジを除去せずに根尖病変だけどうにかならないか。

他院からのご紹介患者様。
年齢から考えるとそろそろ義歯を使いはじめて慣れていく方が今後高齢になって義歯を使いはじめるよりもメリットがある場合もあるが、それをお話した上でも、現状維持を強くご希望されたとのことで、当院にご紹介いただきました。

今回、ブリッジを外さずに治療を行うにあたり、2通りの方法を提示させていただきました。

1つはブリッジの上に穴をあけ、非外科でRe-RCTを行う方法。
根充が途中までしかなされていないことから、根尖部まで形成されていない可能性があり、その場合正しい方法で根管形成できれば成功率は5年で85%程度見込めます。
実はすでに根尖まで大きく拡大はしていて単に根充材が届いていないだけという場合は、今以上に拡大することが困難になるため、成功率は落ちるでしょう。エックス線上では根充材の先に根管は見えますが、人工的にすでに拡大されているようにも見えます。実際はこのように見えてもちゃんと拡大できることもあるので、後は触ってみなければわかりません。
この方法のメリットは手術を回避できる可能性があることで、デメリットはブリッジに穴をあけなければならないこと、補綴歯は歯冠と歯根の歯軸がずれているため、ラバーダムやマイクロスコープ下では本来の歯軸からずれて形成してしまい、最悪パーフォレーションを起こすリスクもあるということ、治療が成功したとしてもそれはこの歯が一生持つということを保証するものではないということが挙げられます。

もう一つの方法は、ブリッジは触らず、外科的に歯根端切除+逆根管形成・充填(Apicoectomy)を行うこと。
CBCTで見ても、頬側の骨はなく手術は容易であることがわかります。Re-RCT無しのApicoectomyの成功率は5年で90%以上、比較的最近の論文では10ー13年の成功率も出ていて75%程度。
メリットはブリッジに傷をつけない、デメリットは外科処置が必要であること、歯根が短くなること、Apicoectomyした歯はブリッジの単独支台はしないが、今回中間部ではあるものの、犬歯であり、実質単独支台歯に近く、治療が成功しても長期予後には疑問が残ることが挙げられます。

かなり端折りましたが、以上以外のこともいろいろをご説明し、ご家族ともご相談いただいた上で、患者様はApicoectomyを選択されました。

現在術後2年ですが、経過良好です。症状はすべて消えました。ここまでくれば、破折するまで持つと思いますので、今後はより一層の咬合チェックが必要になります。
紹介元の医院の先生と連携しながら、今後もチェックしていくことになっています。

こんな感じで今後も症例報告していきたいと思います。


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2024.1.16 facebook投稿分:下顎第一大臼歯のApicoectomy

右側下顎第一大臼歯のapicoectomy術前後のCBCT像、歯槽骨の回復が見て取れる
右側下顎第一大臼歯のapicoectomy術前後のPA像、破折ファイルの除去も同時に行っている

※ 歯科医師の先生向けの症例報告記事です。

前回に続き外科的歯内療法です。
大体ご紹介でいらっしゃる方は外科適応が多いので、参考になるように外科症例多めで行く予定です。

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症例報告2
「破折ファイルの先に根尖病変がある右下大臼歯症例」
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同じ所属の歯科医師会の先生からご紹介いただいた患者様

■ 女性 来院当時61歳

【依頼内容】
ガッタパーチャはある程度除去できたが、治療途中でファイルを破折してしまった。どうにかならないか。

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他院からのご紹介の患者様。

治療途中でファイルが破折し根管内に取り残されてしまったことは誰しも経験があると思います。
破折したファイル自体には害はなく、その歯の予後に直接影響を与えることはないことがわかっており、逆に、ファイルを取るために根管口近くの歯質を大きく削合することは予後を低下させることがわかっているため、歯をがりがり削って何がなんでもファイル除去にこだわるというのは、決して良いことではありません。

患者様には、1.ファイル破折自体に問題はないこと 2.ファイル破折を100%防ぐ方法はないこと 3.ファイルを無理に取ることはデメリットがあること 4.折れたことを隠さず、他院に紹介までして対応している紹介元医院は大変誠実で素晴らしい医院であること等を説明します。

というわけで実際の治療では、歯質にダメージを与えず容易にファイル除去できればそうしますが、そうでなければこのままRe-RCTし、それでも治療が奏功しなければ外科的歯内療法へ移行します。
今回は破折ファイルは比較的あっさり取れたのですが、レッジができているのか根尖が石灰化しているのかで穿通はできませんでした。このまま長く経過を見ることもありますが、今回は十分な話し合いの結果、Apicoectomyすることとなりました。

術後一年で根尖病変は消失し、症状はすべて消えました。ここまでくれば割れない限り持つと思いますので、咬合のチェックを紹介元医院の先生にお願いしていくことになります。
大臼歯の根切・逆根管形成・充填を適切に行うのは本当に大変です。まっすぐ切ること、3mmしっかり逆根管形成すること、出血のコントロール等、特に今回のように右下大臼歯は右利きの術者にとっては一番難しい部位になります。大変な処置は無理に手を出さず、当院までご紹介ください。


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2024.1.24 facebook投稿分:小児の根未完成歯の再生"的"療法・リバスクラリゼーション

左下小臼歯のリバスクラリゼイーション前後のCBCT像、歯槽骨の再生が確認できる
左下小臼歯のリバスクラリゼイーション前後のPA像、根尖が閉じてきていることが確認できる

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。
前回までは外科的歯内療法を連続してお届けしましたが、今回は小児の再生”的”療法です。

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症例報告3
「小児の根未完成歯の再生”的”療法」
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強い痛みで眠れないと母親に連れられて急患でいらした小児の患者様

■ 男性 来院当時10歳

【主訴】
数日前から左下の歯に痛みがあり、今朝その外側の歯茎が大きく腫れてきた。

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急患の小児の患者様。
10歳、左下5の中心結節に破折を認め、同歯根尖部相当部の粘膜に腫脹を認めました。
急性期にある小児では、cold test等なかなか正しい検査結果は得られにくく苦労しがちです。

こちらが「“痛かったら” 手をあげてね」なんて言おうものなら、
本人は「今から痛いことするんだ!!」と身構えてしまって、こちらが想定している痛みには程遠いようなほんの少しの刺激でも手を挙げてしまうからです。

というわけで、エックス線による診断がメインになっていきますが、なかなかPA撮影も大変です。3次元的な位置関係を把握するためにもCBCT撮影が必須になります。
CBCTでは頬側皮質骨がほとんどなくなっていることが確認できます。

さて、根未完成で失活していたら根治しても無駄でしょうか。しかも頬側の骨がこれだけなくなっており、舌側の骨だけで維持されているようなCBCT像を見ると、これはもう保存不可で抜歯だと診断されることも珍しくないと思います。
しかしこれを抜歯とすると後々トラブルになる可能性があります。なぜなら小児の根未完成歯のRegenerationは非常に成功率が高いからです。

保護者の方にどういう方法でやればどれくらい成功率があるかを文献を元にご説明したところ、Regeneration治療を希望されました。
現在はMTA系材料を用いて一回法で行うことが多いですが、当時は一度水酸化カルシウムを調薬する二回法で行っていました。

治療後すぐに痛みはなくなり、腫脹も引きました。その後、術後1年で、根尖部らしきものができ、頬側皮質骨もしっかり再生していることが確認できます。
さて、なぜ再生”的”と書いてあるかですが、これは歯髄が再生しているわけではないからです。根尖部には根管らしき形態も見られますが、セメント質が添加してそういう風に見えているだけだそうです。歯髄反応が復活した!という話もありますが、これ前述したとおり、なんでもかんでも手が挙がってしまうため誤って+と判定されているだけではないかという意見もあります。
かといって、皮質骨は確実に再生していますし、根の長さも歯質の厚みも増しているので、得られるメリットは決して小さくないでしょう。

このような根未完成歯の歯内療法は数こそ多くは無いものの、ちょくちょく紹介してもらっている代表症例の一つです。
紹介元の医院に出向き出張施術をしたこともあります。治療自体が一回で終えるからできることです。
ご自身だけで悩まず、まずはご相談ください。


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2024.1.31 facebook投稿分:第二大臼歯の外科的歯内療法

意図的再植術後に骨が再生しているのがわかる

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。 今回は外科的歯内療法の意図的再植術について報告していきたいと思います。

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症例報告4
「第二大臼歯の外科的歯内療法」
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歯科医師会の先生からご紹介いただいた患者様。

■ 女性 当時42歳

【主訴】
左上の一番奥歯で噛むと少し痛い。何もしなくても違和感がある。
かかりつけ医で根管治療しているが経過が良くないので紹介してもらった。

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上顎左側7番に根尖病変があり、時間が経過したSinus tractがありました。
根尖孔外感染が疑われ、通常の歯内療法が奏功しない可能性がある症例です。
こういう場合は、咬合面からだけの治療ではどれだけ治療し続けても治癒しません。
歯内治療は薬で治療するものではないからです。調薬し続けることに意味はありません。
調薬もせず死腔のままはもっとダメです。

ということで、まずは非外科でやってみてそれでも上手くいかない場合は、外科的歯内療法の適応になります。
上顎でも下顎でも、第二大臼歯のApicoectomyは困難なので、最初からIntentional Replantationを行うこととなりました。

術後1年で根尖病変は消え骨が再生していることがわかります。
この方は症状がすっきり消える方ではありませんでしたが、骨が出来たのを見て大変喜ばれ、この後プロビから最終補綴に移行することとなりました。

CBCTは治療の結果を患者様にもしっかり伝えられる最適なツールだと思います。
比較することが大事で、治療前後どちらの資料が欠けてもこの説明はできません。

さて、順調に経過しているようですが、Apicoectomyの話でも出たように、それでもこの歯が一生持つことはないでしょう。
10年以上の予後が保証されるような治療ではないのです。
患者様には治療前の説明で、こういったことも含め文献で明らかにされていることを、しっかりご説明した上で選択していただいています。

しかし、例えいずれこの歯が抜けたとしても、これだけ骨の厚みが回復すれば、今後インプラントするのにも初期固定が十分に得られそうで、ソケットプリザベーション+待時埋入することなく、即時埋入+ソケットリフトで対応できるかもしれません。
他にも人工骨で増生した骨よりも、元々の骨の方が感染にも強いこともメリットだと思います。

義歯にするならあまり変わらないかもしれませんが、全くメリットがないことはブリッジでも義歯でもないでしょう。

日本では前歯、もしくは頑張って小臼歯のApicoectomyまではなんとかできても、大臼歯はちょっと・・・という人がほとんどだと思います。
当院の外科的歯内療法で最も多い歯種は大臼歯です。
紹介患者様に絞れば、非外科も外科も今のところほぼ100%大臼歯で、残りは前歯や小臼歯のApicoectomyのやり直し依頼です。
大臼歯は最初から手をつけず、前歯や小臼歯はやってみたがうまく行かなかったという感じでしょう。

紹介患者様は治療後は元のかかりつけ医院に戻り、今まで通りメンテナンスや他の治療を受けておられる方がほとんどです。
逆に、ご自身でネットで調べて当院のホームページを見てやってきたという患者様が、元のかかりつけ医に戻ることはほぼありません。
どちらも同じ説明(前医を否定しない)をしているにもかかわらずです。
先生方から患者様に直接提案することが信頼の維持にも繋がるのだとと思います。


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2024.2.6 facebook投稿分:未熟だった頃に行った下顎大臼歯歯根端切除術の予後:器用さよりも正しい方法でやることが重要

CBCT像:根切後は骨が再生している
PA像:こちらでも根切後は骨が再生していることが確認できる

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。
今回はエンドを専門的にやっていこうと思い始めたあたりに行った症例です。

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症例報告5
「左下の奥歯、何度根管治療しても膿が消えずに困っている」
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抜歯を回避するため色々な歯科医院を転々としている患者様

■ 男性 来院当時40歳

【主訴】
左下の奥歯の根管治療を何度も行っているが、新しい被せて数週間もしないうちにまた腫れてやりなおしを繰り返して困っている。
抜歯を勧められたが、痛みがあるわけでもないし噛めるので抜歯したくない。

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強い症状はないもののSinus Tractやpalpationに悩まされている患者様。

この方は、私が松浦先生の2018 福岡デンタル マイクロエンドコースを受講期間中に行った症例で、今でもよく覚えています。
今でこそ毎日のように非外科なRCTをし、毎週のように外科的歯内療法をしていますが、この頃はまだ外科は数症例ほどしか経験がなく、患者様にもそのことをお話し、了承いただいた上で治療を行っていました。

NSRCTは奏功しなかったため、Apicoectomyを行いました。大臼歯とは言え、左下で口角も硬くないという、今であれば全く難しくない手術なのですが、当時は四苦八苦しながらやっていたのを覚えています。
今も定期チェックで通院していただいており、術後5年以上経過しておりますが、再発はありません。CT上では骨の再生も見られ、経過良好であることがわかります。

技術的に未熟だった当時と今とで、特に成功率には変化を感じていません。これが意味しているのは、重要なのは技術ではなく、守るべきこと(まっすぐ切る、3mm切る、3mm形成する)を厳密に守ることであるということでしょう。ただ、そこをしっかり守りぬくのがいかに大変か、出血してきて視野が悪くなりもういいやとなったり、麻酔が切れて痛みが出てきたり、逆根管形成用超音波チップが鈍らになりなかなか形成できなかったり、これらを回避するために、出血や痛みはどのようにすればどれくらいコントロールできるのか、それでも出血してきたらどうしたら良いか、麻酔が効かないときにはどうすれば打開できるか、超音波チップは最初から新品を使い捨てで使用するようにするなど、さまざまな事を想定し、これがダメならこの手、それがダメなら次の手、をしっかり頭に入れそれを正しく実践する必要があります。

現在はこの記事を書いている時点で128症例、そのほとんどが元々hopelessと診断された歯でしたが、現在術後に抜歯に至ったケースが2症例、抜歯適応だが症状が軽度のため患者様希望により抜歯せず経過観察しているケースは3症例、引っ越しや遠方からの来院で術後1年以上予後確認ができていない方は7症例程。
自分で行った症例の5年、10年の成功率の統計を取るのを楽しみにしています。結果が出たらまたお知らせしたいと思います。


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2024.2.17 facebook投稿分:外科的歯内療法ができない歯のInitial treatment

CBCT像:RCT後は根尖病変が消失している
PA像:radixはこれだけ曲がっている

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。
今回はNSRCT(Non-Surgical Root Canal Treatment)、非外科の症例です。
Radix Entomolaris のある下顎第一大臼歯です。

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症例報告6
「外科的歯内療法ができない歯のInitial treatment」
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同じ歯科医師会の先生からの紹介の患者様、症例自体は今までのような派手さはないただの抜髄症例です。

■ 女性 来院当時15歳

【主訴】
右下の虫歯が深いので神経を残す処置が難しいかもしれないと言われ、一度くりえいと歯科で見てもらうように言われた。

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Vital Pulp Therapy希望の患者様でしたが、歯髄検査の結果はすべて(-)で、CBCTでは根尖病変を認めました(年齢的にも第一大臼歯の根尖は閉じている年齢で、隣在歯と比較しても明らかに根尖病変がある状態)
というわけで、残念ながら抜髄が必要ですというお話をし、しかしすでに根が完成している状態なので、抜髄自体が歯に与えるマイナス影響がないこと(よく言われる神経を取ったら歯が脆くなるというのは文献で否定されていること)を十分お話した上で、抜髄を行うことになりました。
Radix Entomolarisの存在をお話し、紹介元の先生とも相談した上で、当院で精密根管治療を行うこととなりました。
Radix Entomolarisの外科的歯内療法は基本できないため、なんとしてもこのInitial treatmentをしっかり奏功させたかったためです。
以前1ケースだけ、Radix EntomolarisのIntentional replantationを行いましたが、特大の根尖病変だったのにもかかわらずものすごく苦労しました。Apicoectomyを併用してなんとかやり遂げて、その後しっかり治癒してものすごく感謝していただけて嬉しかったのですが、もうそうそうやることはないでしょう。抜くのも戻すのも本当に大変だからです。

というわけで、この方は無事RCTを行うことができ、半年経過観察の後、最終補綴をしました。
それからさらに半年が経過し術後1年が、このエックス線写真になります。もちろん全く症状はありません。

Radix Entomolarisは知っていないとそのリスクに気づかず、根管を破壊しがちです。
エンド症例の診断には、CBCTは必須です。Initial treatmentであっても必ず撮影しなければなりません。
下手に触って、難症例化してしまったら、誰も責任は取れないのですから。


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2024.2.23 facebook投稿分:垂直歯根破折歯の保存治療

破折している部分をbiodentineで修復
CBCT像:骨の再生が確認できる
PA像:根尖病変の治癒が確認できる

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。

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症例報告7
「垂直歯根破折歯の保存治療」
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「痛くないのにどこでも抜歯と言われる」と疲れた顔で来院された患者様

■ 女性 来院当時52歳

【主訴】
左上の内側の歯茎を舌で押すと痛い。ずっと根の治療をしていてやっと被せものが入った歯なので抜きたくない。なんとかならないか。

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前回同様、強い症状はないもののSinus TractやPalpationに悩まされている患者様。

前回との違いは、歯根破折を起こしているという点。歯根破折している歯は原則抜歯です。なぜなら予後が著しく悪いからです。
一次的に治癒しても、また割れてしまえばそれで終わりです。
垂直歯根破折歯の予後は、一年で8割、二年で3割だと言われています。このことをしっかり説明した上で、あとは決めるのは患者様です。
ということで、この方は保存治療をご希望されました。

今回は写真も載せていますが、頬舌的に真っ二つに割れていました。ファイバーコアとクラウンで維持されているだけです。
意図的再植するために、一度抜歯し、メチレンブルーで染色し、破折線を確認。歯根端切除し、破折線を削合し、BC Sealer+Biodentineで充填・修復しました。
今回はBiodentineという製品を使っていますが、こちらはエックス線に歯質と同等程度にしか写らないのが難点です。充填されているのかどうかが判別が難しいのです。

意図的再植術後まもなくして症状は消え、半年後のエックス線では骨の再生も確認できます。動揺もアンキローシスも疼痛もありません。

ただ、咬合はさせてません。割れるからです。
そんな歯を残して意味があるのかと思われるかもしれませんが、少なくとも保隙装置的な意味はあるでしょう。しかしその程度です。健全でなんでも噛める歯にはなることは決してありません。
繰り返しになりますが、垂直破折がある場合、大前提は抜歯です。当院でも決して保存を強く勧めたりはいたしません。ですが、歯を残したいと強く願う人は少なからずいらっしゃるので、予後・メリット・デメリットをしっかり理解し納得された上で、ご本人が選択されるなら歯科医師にそれを止める権利はないと思います。

骨が回復することもメリットだと思います。回復したあと抜歯すれば感染リスクが少なくインプラントできるかもしれません。
さて、割れなければどこまで持つのでしょうか。破折歯の修復処置も大分症例が溜まってきたので、いずれ予後をまとめてみたいと思います。

次回は骨欠損が大きい破折歯の修復症例をやります。


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2024.2.29 facebook投稿分:著しい骨吸収を伴う歯根破折歯の保存治療

破折している部分をbiodentineで修復
CBCT像:骨の再生が確認できる

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。
前回に続き破折修復の症例です。念を押しますが、垂直歯根破折で推奨される治療は本来抜歯です。何がなんでも残すのが良い治療ではありません。

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症例報告8
「著しい骨吸収を伴う歯根破折歯の保存治療」
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症状はないが、骨の支持がほとんど無い歯根破折歯をどうにか残したい患者様

■ 女性 来院当時59歳

【主訴】
左下の一番奥の歯茎が腫れた。痛みはないが、骨が無いので抜歯と言われた。どうしても抜きたくない。

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こちらも前回同様、強い症状はないので抜歯したくないという強い希望を持っている患者様。

前回もお話したとおり、歯根破折している歯は原則抜歯です。垂直歯根破折歯の予後を一年で8割、二年で3割だということををしっかり説明した上で、あとは決めるのは患者様です。患者様にはなるべく状況を客観的に捉えていただきたいので、こちらの主観は伝えないようにしています。
予後やリスクを十分承知いただいた上で、この方は保存治療をご希望されました。

意図的再植術を行いました。はっきりとした破折が確認できます。ここから感染して骨が吸収していたのでしょう。形成しBiodentineで修復します。
今回も咬合はさせてません。

破折歯の保存は賛否両論あるでしょう。メリットデメリットについては前回の記事も参考にしてください。
破折修復は破折していないRCTに比べより一層、インプラントまでの中継ぎの意味合いが強いと感じています。いずれは抜ける歯であったとしても、これだけ頬舌的に全く骨が無い状態で抜歯した場合、骨を垂直的に増やすのはかなり大変だと思いますが、破折修復が奏功すれば骨が回復するので、抜けたとしても良い条件でインプラントできるからです。

骨増生に費用をかけるか、破折修復に費用かけるか。
情報提供はしっかり行いますが、選ぶのは歯科医師ではなく患者様です。


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2024.3.6 facebook投稿分:鼻腔や上顎洞まで及ぶ骨欠損を伴う根尖病変を有する歯の外科的歯内療法

鼻腔や副鼻腔への骨が再生している

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。
今回は口腔外科専門医の先生から紹介された症例です。

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症例報告9
「鼻腔や上顎洞まで及ぶ骨欠損を伴う根尖病変を有する歯の外科的歯内療法」
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同じ歯科医師会の先生からのご紹介いただいた患者様です。
この方は口腔外科専門医の先生で、抜歯した場合の鼻腔や上顎洞への影響を考え、どうにかならないかとご相談を受けました。
外科的歯内療法で成功率90%以上だとお話したところ、ぜひ見学させて欲しいと言われ、本当に自院を休んで当日見学に見えられました、大変真面目な先生です。

■ 女性 来院当時51歳

【主訴】 歯が痛くて噛めない。抜歯したら鼻腔と繋がると言われどうして良いか途方にくれている。

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PAでは良く分かりませんが、CBCTを見ると上顎洞だけでなく、鼻腔にまで根尖病変の影響が出ていることがわかります。
この歯を抜歯し、病変をすべて掻爬したらとりかえしのつかない欠損ができた可能性もあったかもしれません。
PAを見ると破折ファイルもあります。

まずはRe-RCTを行い、その後意図的再植術を行いました。
私は6と7分けて手術するよりも67同時の方がやりやすいので、まとめて治療しました。
術後たった半年で、病変はすっかり消え、骨の再生も認めます。
この方は大分治りの早い方でしょう。別の症例で今年1月一番最初に報告した症例報告1の方のように2年程かけてようやく回復する方も珍しくありません。

症状がすべて消えただけでなく、歯も抜かずに済み、鼻も上顎洞も一切触らずに済んだので、患者様は本当にすごく喜んでおられました。
こういう時こちらに感謝していただけるのはもちろんですが、多くの患者様は紹介元の先生にも大変感謝されています。

今回も口腔外科専門医の先生であれば外科は得意中の得意ですから、抜歯や嚢胞?摘出を強行されそうなイメージもありますが、この先生はそれをせず、患者様の利益を最優先して当院に紹介されたのです。
これがいかに勇気のあることで英断だったかを、こちらから患者様に熱くお伝えすることで、患者様が紹介元医院に戻った後、紹介元の先生ともより強固なラポールを形成できると信じて実行しています。

紹介するかどうか迷われたとき、さすがにこんな症例はダメじゃないか?なんて思わず、まずは一度ご相談ください。


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2024.3.13 facebook投稿分:ラバーダムができない患者様のための意図的再植術

サイナストラクトがある
根尖部に透過像なし

※ 歯科医師向けの症例報告記事です。
2024年はほぼ毎週投稿しております。(月4回)

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症例報告10
「ラバーダムができない患者様のための意図的再植術」
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閉所恐怖症やパニック障害など、バイトブロックやラバーダムがどうしてもできないという患者様が極まれにいらっしゃいます。
鎮静下での治療も提案しますが、様々な理由でそれも難しいという方もいます。
そういう方に外科的歯内療法で対応したケースです。

■ 女性 来院当時49歳

【主訴】 歯茎に出来物ができて何年も治らない。たまに膿が出て嫌な味がする。歯が原因で抜歯しかないと言われたが痛くはないので抜きたくない。

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左下7番にSinus tractを認めました。でも慢性化しておりPalpationもそんなに強くありません。大きなメタルコアが入っていたのでとりあえずRe-RCTから行おうとしたところ、ラバーダムが使えませんでした。口を塞がられたり、バイトブロックがどうしても怖くてできないとのこと。
ここで二つの方法を考えました。一つはIVS下で治療を行うこと。ただ、今回の歯は長期に渡るSinus tractの既往があり、根尖外感染が疑われ、Re-RCTが奏功しない可能性が低くない症例です。しかもこの歯は樋状根でした。
つまり、頑張ってお金をかけてメンタルを削ってIVS下でRe-RCTを頑張ったところで、その後結局外科的歯内療法が必要になる可能性が通常よりも高いということです。
しかも樋状根。NSRCTでは大変でも、Intentional Replantationならむしろ楽勝な症例です。抜きやすく戻しやすいからです。

というわけで、上記のことをご説明し、この方はIntentional Replantationを選択されました。
歯を抜いたら、後は戻すまで口腔外で行う治療なので、患者様は大変楽です。ガーゼは噛んだままですが、スマホを見たりお手洗いにいったりも自由です。
口腔外で歯を治療し終わったら口腔内に戻します。縫合も止血シーネなども不要です。
鎮痛薬も翌日は飲む必要がなかったという方がほとんどです。

術後まもなくして何年も消えなかったSinus tractは消え、再発もなく1年半が経過しました。
その他の症状もありません。症状がないからこそ、強い力で噛んで割れてしまわないように毎回お話し、口腔ケアに励んでもらっています。

さて、にしても、この方の場合、歯内療法のたびに毎回IVSか外科をやるわけにもいかないと思うので、こういう方は何もないときから、少しずつラバーダムやバイトブロックの練習をしてもらうようにしています。この方も今は少しだけできるようになってきました。
トラブルが起こる前から、起こったときの対策を練っておくのも重要ではないかと思います。


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【エンド関連でお悩みなら、気兼ねなくご紹介ください。紹介前のご相談もお気軽にどうぞ】
患者様にはご紹介いただいた先生がどのような想いでご紹介されたか、歯科医師それぞれに得意分野があって、すべての分野で完璧な歯科医師など存在しないこと、患者様ご本人のことを第一に考えるからこそ連携することが大事であることをしっかりお話しております。

くりえいと歯科おおかわちクリニック
福岡県宗像市くりえいと3丁目3番1号 0940-39-8020